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その鮮やかな緑の中に、灰色の石を積み重ね、一切の華美を取り除いた建物がぽつんと立っている。修道院である。
さほど大きくも広くもなく、かといえ、狭苦しく感じるほど小さいわけでもない質素な建物の内に三十人ばかりの修道女たちが暮らしている。
そして、その暮らしぶりは、朝日よりも早く目覚め、祈り、畑を耕し、祈り、糸を紡ぎ、祈り、日が暮れれば眠るというひどく簡素で、平穏で、外界との交流を断った自給自足のものだった。
その暮らしが昨日も一昨日もその前の日もずっと続いて来て、今日も明日も明後日も変わることなくずっとずっと続いていく。幼い頃に自らの意思でこの修道院に身を寄せた彼女は、そんな暮らしをもう十年以上続けていた。
彼女の見る限り草原に果てがない。他に建物らしき物が一切見当たらず、修道院は陸の孤島であった。馬を一昼夜ずっと駆けさせなければ、一番近い村に辿り着くこともできない。
建物の南側に畑がある。季節によって、麦や綿、豆などの野菜を育てている。
彼女は他の修道女たちのように勤労を強制される身分にないので、気が向かない日は、他の修道女たちが畑仕事に勤しむ様子を建物の影に座り込んで眺めていた。
――なんて退屈な。
ならば働けばいいのだ。くたくたになるまで働けば、夜もぐっすり眠れるだろう。だが、やる気が起きない。起きないやる気に従って、何もせずにいると、ますます無気力になった。
――やることがない。
正しく言えば、やりたいことがない、だ。
すると、込み上がってくるのは強烈な怒りだった。
――どうして私が! なぜ私が!
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