2.賢者修行は王が弟子で、前途多難 

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 それに加えて彼の態度。これにも大きな問題がある。玉座の時と大違いで、あの時のあの横柄さはいったいどこに旅立ってしまったのかと思うくらいに、アーサーは姿勢を正してマーシャと向かい合い、真摯な瞳で見つめてくる。 (ぎゃああああっ! やめて! こっち見ないで! 見られると意味なく緊張するの! それに美形の真顔ってなんか怖い! 本人にはそのつもりはないだろうけど、じっと見つめられると、すごく大きな何かを期待されているような気分になる)  無理っ! とマーシャはテーブルを両手でバシンと叩いた。 「期待されても困るのよ! 好きとか意味わかんないし。三年前にちょこっと会っただけでしょ。大した話もしてないし。それで好きとか言われても困るのよ‼」  きぃきぃ喚くように言えば、澄んだ青い瞳が一瞬見開かれ、その後その顔いっぱいに笑みが浮かんだ。 「ぶはっ! 突然何を大声で言い出すのかと思えば。神妙な顔をしているから、さっそくドルイドの修行が始まるのかと思ったぞ」 「始めようにも始められないわよ。だって、その……だって……貴方が変なことを言うから……」 「俺は変なことを言った覚えはない。ただマーシャを好きだと言っただけだ」 「そ、それが、それよっ、その……、変なこと…よ……」 「変? 失礼な奴だな。人の気持ちを何だと。……まあ、いい。マーシャがどう言おうと俺の気持ちは変わらないからな。それより始めようじゃないか。ドルイドの修行とやらを」  どうやらアーサーは今はこれ以上この話をするつもりがないらしい。
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