2.賢者修行は王が弟子で、前途多難 

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「だって、自分の弟子の紋章なんて初めて見るんですもの。クレマチスなんだぁ、へぇ、っていう気持ちなの。ええっと、説明するわね。このアザミの花が、あたしがメルディンというドルイドの弟子であることを表していて……それから、ここを見て。アザミの葉が四枚描かれているでしょ。これは、あたしがあたしの師匠の四番目の弟子っていう意味なの」 「なら、クレマチスは?」 「あたしの弟子っていう意味。葉が一枚だけついているでしょ。最初の弟子っていう意味よ」  アーサーはマーシャの手のひらと己の手のひらを見比べながら言った。 「なるほど。意味さえ分かれば、自分が誰の弟子で、自分の師のさらに師が何者か、またその師の何番目の弟子であるのか、始祖は何者かが紋章から読み解くことができるんだな。そうやってドルイドたちは自分が何者であるのか、自分のルーツを紋章によって描くことができるというわけだ」 「そう」 「しかし、それでは、代が進むにつれて紋章が複雑化していかないか?」  というか、すでにアーサーの紋章はヤドリギだかアザミだかクレマチスだか何だかの花と葉と蔦でぐちゃぐちゃである。覚えろとか、紙に描いてみろとか言われても不可能なものになっている。
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