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深く息を吐き出してからマーシャはすっと腕を伸ばして、アーサーの前に置かれた本の表紙を指先でこつこつと叩いた。
「開いてみて」
やけに頑丈で分厚い黒い表紙だ。言われるままにアーサーが開くと、その瞬間、表紙の紋章が薄く光りを放った。それは見逃してしまいそうなくらいのわずかな間で、加えて、かすかな光だったが、警戒心の強いアーサーは見逃さなかった。
驚いたアーサーは再び本を閉じて表紙を見やる。すると、常人には信じがたいことに、表紙に描かれたヤドリギの紋章が変化しているではないか。
「これはいったいどういうことだ?」
「貴方の手のひらの紋章と同じになったでしょう? もうその本は貴方の本だっていうことよ。ドルイドにとって、師から貰ったその本は命のように大切なものよ。絶対に手放してはいけないの。本を失えば、ドルイドとしての力も失うことになるのだと思ってね」
マーシャはアーサーの右手を取って、閉ざした本の表紙に再び手のひらを重ねるように言う。
「手放すな、常に持ち歩けと言っても、この本ってすごく重いでしょ? とても持ち歩けないわけよ。だから、ドルイドたちは手の中に本を仕舞うの」
「本を、手の中に仕舞うだと?」
「イメージして。その大きな本が小さく小さく小さくなっていくのを。豆粒よりもさらに小さくなるわ。針の穴に通ってしまうくらいに小さくなったら、すぅっと手の中に吸い込まれていくのよ。さあ、イメージして」
「イメージしろと言われてもなぁ」
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