異世界へ

10/80
前へ
/149ページ
次へ
「そうだね。優斗と一緒にいたら絶対に大丈夫な気がするよ」 「ああ。任せとけ!」 俺たちの会話が聞こえたのだろう、草むらの近くを散歩をしていたお婆さんが、俺たちの方を見た。 俺とみゆは「こんにちは」と挨拶をして、頭を下げる。 「こんなとこで何をしてるんだい?」 お婆さんは俺たちが気になったのか、どんどん近づいてくる。 「可哀想に、怪我をしているのかい?」 お婆さんは最初にみゆの足首を見た。そして、みゆの顔を見た途端、いきなり怒りの形相を浮かべた。 「この悪魔! 出て行け!」 お婆さんは落ちていた石をみゆに向かって投げると、走ってどこかに行ってしまった。 「みゆ、大丈夫か?」 幸い石はみゆには当たらなかった。だけど、悪魔と呼ばれた事で、みゆの顔は真っ青になった。 「どうして私が悪魔なの?」 知らない人から向けられる敵意に、みゆはショックを受けているのだ。 「わからない。みゆに似た悪魔がいたとか」 俺は三田先生が「京子さん」と言った言葉を思い出した。 みゆとみゆのお母さんはそっくりだ。もし、みゆのお母さんがこの世界に来た事があって……。 そこまで考えて、俺はギョッとした。 この仮設が正しいなら、みゆのお母さんが悪魔ということになってしまう。
/149ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加