約束と、彼

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 本当は、もっと良い点数が取れたはずだろう。それなのに、自分が予想していた点数よりもかなり悪くて、私はがっかりしていた。  こんなんじゃ、志望校に行けない。  そう思いながら頭を抱えていると、ガラッと教室の扉が開く。驚いて顔を上げると、そこにはジャージを着た春人がいた。 「おぉ、川田じゃん。何してんの?」 「……松原くん」  この頃の私達は、お互いを名字で呼んでいた。ただのクラスメートの関係だったからだ。  私は答案用紙をクリアファイルに入れると、慌てて席を立ち上がった。今は一人になりたかった。ましてや苦手なクラスメートに、こんな酷い点数を見られてしまうのが、とても恥ずかしかった。 「何でもない。じ、じゃあね。松原くん」  手を振り足早に立ち去ろうとした私に、「ねえ」と春人が話しかけてくる。 「なに?」  おもむろに振り返ると、悪戯っぽく微笑む春人の姿があった。 「……今から、甘いものでも食べに行かない?」 「…………えっ?」  私は思わず耳を疑う。今彼は、甘いものを食べに行かないかと聞いてきた。なんで仲良くもない私にそんなこと言うのだろう。いや、ていうか。 「学校帰りに寄り道したら、駄目じゃないの?」  混乱する私が発したのは、結局、そんな真面目な言葉だった。 「……ふっ、あははは」  春人が笑い出す。そりゃ、春人みたいな人からしたら、私なんか真面目過ぎるかもしれない。でも、そんなに笑わなくても良いと思う。 「何よ。なんか変なことでも言った?」 「いや、やっぱり川田って真面目だなぁと思って……」 「馬鹿にしないで」  私がムッとして見せると、春人は「わりぃ」と言いつつも、楽しそうに笑い続けた。
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