3人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
本当は、もっと良い点数が取れたはずだろう。それなのに、自分が予想していた点数よりもかなり悪くて、私はがっかりしていた。
こんなんじゃ、志望校に行けない。
そう思いながら頭を抱えていると、ガラッと教室の扉が開く。驚いて顔を上げると、そこにはジャージを着た春人がいた。
「おぉ、川田じゃん。何してんの?」
「……松原くん」
この頃の私達は、お互いを名字で呼んでいた。ただのクラスメートの関係だったからだ。
私は答案用紙をクリアファイルに入れると、慌てて席を立ち上がった。今は一人になりたかった。ましてや苦手なクラスメートに、こんな酷い点数を見られてしまうのが、とても恥ずかしかった。
「何でもない。じ、じゃあね。松原くん」
手を振り足早に立ち去ろうとした私に、「ねえ」と春人が話しかけてくる。
「なに?」
おもむろに振り返ると、悪戯っぽく微笑む春人の姿があった。
「……今から、甘いものでも食べに行かない?」
「…………えっ?」
私は思わず耳を疑う。今彼は、甘いものを食べに行かないかと聞いてきた。なんで仲良くもない私にそんなこと言うのだろう。いや、ていうか。
「学校帰りに寄り道したら、駄目じゃないの?」
混乱する私が発したのは、結局、そんな真面目な言葉だった。
「……ふっ、あははは」
春人が笑い出す。そりゃ、春人みたいな人からしたら、私なんか真面目過ぎるかもしれない。でも、そんなに笑わなくても良いと思う。
「何よ。なんか変なことでも言った?」
「いや、やっぱり川田って真面目だなぁと思って……」
「馬鹿にしないで」
私がムッとして見せると、春人は「わりぃ」と言いつつも、楽しそうに笑い続けた。
最初のコメントを投稿しよう!