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でも、気づいたら、私も笑っていた。
不思議だった。さっきまで沈んでいた心は、苦手なクラスメートによって、引き上げられていた。次のテストでは結果が出るように頑張ろう。自然にそう思うことが出来た。
この時から、私にとって春人は苦手なクラスメートではなくなった。
単純だと思う。でも実際にそれ以降、私達は急速に仲が良くなっていったのだ。
名字呼びから名前呼びになった。学校の中や放課後だけでなく、休みの日にも一緒に遊ぶようになっていった。
気づいた時には、私にとって春人は大切な存在になっていた。
だから、卒業式のあの日、私は春人にこんな提案をしたのだろう。
「二十歳になったら、この桜の木の前で会わない?」
卒業式が終了し、私達は中学の校門前にある大きな桜の木の下で、話をしていた。タイムカプセルとかしないの、なんだか寂しいな、と言った春人を見て、それならばと思いついたのだ。
二十歳になったら、この桜の木の下で会おう、と。
だけどそんな私の言葉に、春人は少し驚いていた。
「いや、でも咲良は、遠くの高校に行くだろう?」
「行くけど、大丈夫だよ。今日言ったことは絶対忘れないから」
実は私は、中学を卒業したらこの町を出て、看護系の専門高等学校に進学しようと決めていた。
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