約束と、彼

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 地元の高校に進学する春人と離れ離れになってしまうのは悲しかった。だけど、進路のことを春人に相談した時に、「勉強を頑張ってきた咲良なら、絶対大丈夫だ」と、背中を押してくれたおかげで、決心がついた。  私には、春人がいる。離れていても、春人は私を見ていてくれる。それがわかっていたから、私はこの町を出ようと思えたのだ。  春人は私の言葉に微笑むと、優しく私の頭を撫でた。 「わかった。俺も絶対、約束忘れない。なんたって、咲良との約束なんだから、忘れるわけにいかねえよ」  頭に乗った手の温かさと、冗談っぽくも優しいその声色に、私は思わず泣いた。 「あ、ありがとう。春人……」 「こっちのセリフだ。ありがとな、咲良。だから泣くなよ」  春人はそうぶっきらぼうに言いつつも、私が泣き止むまで、背中を擦ってくれた。  私が泣いたのは、春人の優しさに触れたからだ。  私達の仲が始まったあの日も、進路の相談をした日も、いつだって春人は私の気持ちに寄り添ってくれた。何故か、春人には私の気持ちが何も言わなくても伝わってしまうのだ。  それは、春人が人の痛みとかに、気づける人だからだと思う。春人はいつもふざけているように見えて、実際は周りを良く見ている。だから彼は皆に好かれているんだ。それが私にもわかってきた。
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