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約束と、私
時刻は、1時半になっていた。
「春人!」
私は、数メートル先にいる春人の姿を見て、思わず泣きそうになってしまった。
やっぱり、約束守ってくれたんだ!
普通の人なら、ここで「遅いよ!」と怒ると思う。でも私は、怒りよりも嬉しさの方が勝っていた。数年間会うことがなかった春人と、二十歳になった今、こうして再会出来たことが嬉しかった。
私の方に向かってくる春人は、あの頃よりも大人びていた。元々背は高かったけど、もっと大きくなった。
更に格好良くなった春人に、私はドキドキした。
話しかける時、顔真っ赤になりそう。てか、上手く話せるかな?変な行動とっちゃったらどうしよう。恥ずかしいな……。
春人に再会出来たのは嬉しいが、どうしても、不安の気持ちが勝ってしまう。きちんと約束を守って来てくれたのだから、不安になる必要なんて、本当はないのだが。
でも、何故だろう。動悸が異常だ。
春人を意識しているのもあると思うけど、何だろう……。変な胸騒ぎがする。本当に何なんだろう。
「あ、春人、遅かったね。でも来てくれて、ありがと……」
私はその胸騒ぎを抑えようと、意を決して春人に声をかける。
「えっと……、今は何してるの?就職?それとも、進学したの?」
「……」
目の前に立った春人にそう言ったが、彼は私の方を見ない。それどころか、私と目を合わせずに、彼は素通りした。
まるで、私がいることに気づいていないかのように。
「え……?」
私は後ろを振り返る。春人は、桜の木を静かに見上げていた。私は春人の隣に立つと、あの頃よりも背が高くなった春人の顔を見た。
春人は、悲しいのか、怒っているのか、よくわからない顔をしていた。彼が一体何を考えているのか、私は読み取ることが出来ない。でも一つわかることは、春人には私が見えていないということだった。
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