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いや……。
見えて、いない……?
それって、どういうことなの?
何気なく春人には私が見えていないと思ったが、その理由が私にはわからなかった。
だって、私はここにいる。春人との約束を守るために、私はここにやってきた。
朝早く起きて、真新しい可愛い服を来て、春人に「大学生活はとても楽しいよ」って言うつもりで……。
あれ?
私、今何やっているんだっけ?
大学に行っているんだっけ?就職したんだっけ?そもそも、高校卒業した……?
ーズキッ。
「……っ」
思考の渦に巻き込まれていると、突然、変な頭痛が私を襲った。と同時に、目眩なのか、目の前がグルッと回った気がした。
気持ち悪い……。
そう思った瞬間、春人が、その場にしゃがみ込んだ。
「春人?」
私は吐き気を抑えながら、春人の顔を覗き込んだ。体調でも悪いのだろうか。そう思っていると、透明の雫が、彼の足元にポツポツと落ちた。
「な、何で、咲良……」
中学三年生の頃よりも低くなった春人の声が、私を呼ぶ。
大丈夫だよ。私はここにいるんだよ。そう言いたかったが、次に春人が紡いだ言葉に、私は一瞬息が止まった。そして、私は先程まで感じていた違和感に、やっと気づくことになる。
「どうして、事故になんかあったんだよ……。咲良」
大粒の涙を流した春人は、確かにそう言った。
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