聖暦1862年 12月

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「お口に合うかどうかは分かりませんが……。」 彼女が照れくさそうに言いながら店のドアを開けると、カウンターの上に置かれたものが俺の目に映った。そこには、鍋に入ったホワイトシチューと、自家製ドレッシング、それにグリーンサラダが2人分ある。  「少し待っててくださいね。すぐ温めますから。」  俺たちと合流する前に準備をしていたのだろう。マリアさんがシチュー鍋を火をかけると、たちまち美味しそうな香りの湯気がダイニングに立ち上る。 「うわぁ、美味しそう!」  ごちそうを見つけた瞬間、真っ先に席に座っていたアニーは、目を輝かせながらマリアさんに「ありがとう!」とお礼を言う。俺も後を追うように、彼女へお礼を告げた。 「ここまでして頂いて、本当にマリアさんには感謝しかありません。」 「いえいえ、とんでもないです。」 彼女のごちそうは絶品で、野菜嫌いのアニーが完食していた。 「それでは、また近いうちに来ます。」 「はい、気を付けて下さいね。」 店の前まで見送りに来てくれたマリアさんに手を振り、俺とアニーは馬車に乗り込んだ。 彼女の姿が遠く小さくなり、見えなくなるところまで馬車が進むと、隣に座っているアニーがどこか寂しそうな表情を浮かべているのに気付く。 「パパ……」 「ん?何だ、アニー。」 アニーは少し黙った後、 「……ママが欲しい。」 「……!」 「マリアさんが……いい。」 何を思ったのか、そんな事を口にした。
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