聖暦1863年 4月

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ロビンの飛翔スピードは素晴らしく、ものの10分で俺は現場に到着することができた。 「アニー、大丈夫かっ!?」 心臓の鼓動が早くなる。早く見つけないと、このままではワイバーンに……!! 「アニーッ!!」 転がるようにロビンから着地した俺は、声を限りに娘の名を呼ぶ。現場のあちこちに転がる黒焦げの骸はいずれもワイバーンのもので、子ども達らしき遺体が見つからないことで、俺は少しだけ安心した。 「パパーッ!」 茂みからアニーの声が響く。そちらに目をやると十数人の子どもたちが避難しているのが見えた。 「……アニー!無事だったか?」 俺は猛ダッシュで茂みにいるアニーの元へ走った。空からの敵に対して茂みに隠れるのは良い判断だ。子ども達をとっさに避難させたであろう先生に、俺は心から感謝した。 「パパ……」 「怖かったな、もう大丈夫だぞ」と声をかける俺に、アニーは涙で滲んだ目をこちらに向ける。しかしワイバーンへの恐怖心からアニーが泣いていると思っていた俺は、次に彼女が口にした言葉を聞いて嫌な予感がした。 「どうしよう、マリアさんが……」 「……え。」 アニーの無事な姿を見て安心したのも束の間、次に写った光景は俺を絶望のどん底に突き落とした。 「マリアさん……。」 壊れかけた自動人形のように、俺は茂みの奥へのろのろと向かう。そこに見えたのは、魔女の使う "空飛ぶ箒" と、もはやピクリとも動かないマリアさんの横たわった姿だった。 「私達を茂みに誘導してくれたのは彼女だったんです……。」 「マリアさんがぎゅってしてくれて……それで……」 引率の先生と、泣きながら彼女の様子を話すアニーの声が、俺にはどこか遠くの音に聞こえたーー
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