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緊張を誤魔化すためによく飲んだのか、それとも酔いが残っていたのか、頭がふわふわと覚束無い中また酒を飲んだ。
「大丈夫?」
からかいが混ざっているような問いかけに、私強いのよ、なんて言ってマスターの出してくれたあの頃は飲めなかったカクテルを飲む。味は甘くて、それ以外分からない。
痺れるようなアルコールを包む甘さと、酩酊感。その二つに自分のすべてが蕩けていきそうな、そんな気分になる。
ぼんやりと揺らぎ続ける視界の中で、私が崩した前髪が眼鏡にかかる彼はまるで夢みたいだ。
なぜなのか泣きたくなって、グラスに残ったカクテルを煽って飲む。
「ねえ……宮瀬くんって友達全員に優しいの?」
グラスから口を話してすぐ、口から滑りだしていったのはそんな言葉だった。
私ですら思わぬ質問に彼は首を傾げて「ん?」と今にも言い出しそうな顔をする。
「どういうこと?」
「いや、だから、さっきみたいに心配してくれたりとか」
誤魔化そうかとも思っていたけれどそれはそれでおかしくなる気がして、彼の疑問に素直に答えた。そうして話した言葉が、酷く自惚れていることくらいわかって、恥ずかしくて消えたくなる。
顔が赤くなっているに違いない、そう思い自分の頬に当てようとした手が止まった。
「え」
彼の顔が真っ赤だった。
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