星降る国の王

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 昔々あるところにとても裕福な国がありました。金銀財宝あらゆる宝がこの国に集まり、人々は皆お金持ちでとても裕福な暮らしをしていたといいます。それはそれは幸せな国だと周辺の国からも旅人や貿易目的の商人が常にこの国を目指したと言う話です。  夢の国、黄金の国、宝石がまるで満天の星のようだと言うことで星降る国と言う人さえいます。とても素晴らしい国なのです。 「暇だ」  国王はいつも退屈だ、やる事は特にない。仕事は全て優秀な部下がやる。国王のやる事は食う寝る性欲を発散する、自分がいかに楽しく過ごせるかを考える事だ。 「お暇な国王、今日も民が千人ぐらい死んだそうですよ。ほぼ全て飢えです」 「あっそ」  少し口の悪い宰相は国王の幼い頃からの付き合だ。平民の出だが非常に優秀で傍仕えとなり、常に王を退屈させなかった。多少の無礼や言葉遣いの悪さもお気に入りであるがゆえに許されている。  この国ではいかに国王に気に入られるかで出世が決まる。優秀で在ることは必須条件だった。  この国がとても豊かなのは、平民が奴隷のように働かされているからだ。寝る時間と食事の時間以外すべて労働。働かない物は食事も支給されたないので死者は多い。女は子を産む道具としてまるで牧場のような施設に入れられている。兵士はそういう女を自由に「使う」事ができ、気に入った女を妻にできた。金を生まない商人、国を守らない兵士、役に立たない者はすべて平民に落とされる。  国のために働ける者には手厚い褒美があるが、それ以外の者は全て労働にあてがわれる。それを知らない旅人たちは手厚い歓迎を受けるのでこの国は素晴らしいと、この国に来れば幸せになると周辺諸国に勝手に噂を振りまいてくれる。働きアリとして、伝書鳩としてとても優秀だ。 「お前の平民の話はいつもつまらない。もっと面白い話をしろ」 「そろそろいい感じに国が滅ぶ初期段階に来てるんですけど。暴動が一日十回も起きてます」 「暴動を抑えられなかった兵士は全部労働にまわせ」  その労働に回された兵士たちが暴動を起こし平民たちもそれに乗っかっているのだが。この話をこれ以上続けても機嫌が悪くなるだけだと判断した宰相は話を変えた。 「お暇な国王、あなたは何をすれば暇が紛れますか」 「やりたい事はもうやり尽くしたし、遊びたいことも遊び尽くした。特にやる事は無い。世の中何が一体面白いんだ」 「生まれた頃からあらゆる贅沢を尽くしたあなたならもうやることもないでしょうね。それなら今まで見たことのないものを見ると楽しいのではないですか」 「例えばどんなことだ」
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