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「それが賢明でしょうな」
桜井が須藤に目配せすると、車は方向転換した。きっとマスコミも沢山集まっている事だろう。頭上でヘリコプターの旋回する音も聞こえた。
「あなたもやっと解放されるのではないですか」
「え?」
「犯罪を共有する事で繋がる友情なんて悲しいだけですよ」
「……そうでしょうか」
私にとっては初恋だった。
「常に一緒に居るのではなく、一緒に生きて行く事が本当の願いだったのではないですか」
桜井の説教くさい言葉は、思ったより嫌では無かった。久しぶりに目からこぼれた涙は存外に温かった。
了
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