つなみ

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つなみ

 つなみがとうとう今日、逝ってしまった。  昨夜、息がぜえぜえいっていたので、もうまずいかもしれないと思ったけど、その場は持ち直して息も整った。  翌日、わたしは16時近くまで寝ていた。途中、つなみが何回も鳴いたのに、わたしは返事だけして起きようともしなかった。まだ大丈夫だと思っていたのと、もしかしたら悲しみから逃げ出したい気持ちもあったんだと思う。  つなみが閉じこもってるベッド下の引き出しを開けると、鳴いた。最後になるだろうとわかり、ベッドに寝かせた。部屋を出て行ったり、離れるたびに首を起こして、わたしを目で追った。もうすぐ逝くのに、どこ行く気? ちょっとも猶予ないんだけど? と言ってたんだと思う。  思ってた以上に早く、そのときはやってきた。つなみのあたまに顔をくっつけて横になってたとき、つなみが急に体を起こして両前脚でわたしの腕を引っ張った。その前脚を手繰り寄せて、抱き抱えて、つなみの名を何度も読んだ。つなみは苦しがって、最後の雄叫びと、うー、と聞いたこともないような唸り声をあげて、空を何度も吸って、吸えなくて、何度も、何度も。絶命した。  起きて、たった一時間のことだった。なんで、もっと早く起きてあげなかったのか。そしたらもっと最後の時間を、もう少し平和に、幸せに、過ごせたのに。わたしはバカが過ぎる。どうして、大事なときに起きることができないんだ。それも11時間も寝ていた。馬鹿が過ぎて、言い訳もない。つなみも相当あきれていただろうね。あんなに、あんなに、死ぬよ、もう逝くよ、逝くのに、無視ってどういうこと? 一緒にいたいのに! って、言ったのに。飼い主が馬鹿ばっかりに。最後まで、こんなことになった。  つなみに、もう一年がんばって欲しかった。AIMの薬が、もう少ししたら承認されて、末期の腎不全の猫でも、治る見込みがあったのに。もう少しだったのに。  つなみを冷やす気になれず、逝ってからも膝の上に乗せている。温かい。すごくかわいい。後悔のないように、思いっきり介護をしたかった。でもつなみはすごかった。前日の午前まで自分でトイレに行った。最後の日、つなみが何度鳴いても起きなかった馬鹿さ加減だけが、なにより悔やまれる。馬鹿は死ぬまで直らないのか。  次の猫こそ後悔のない看取りを、と思いながらの4匹目。もう猫はいない。  うちの猫は、16、15、19、16で逝っている。なかなか20まで生かせてあげられてない。他に猫がいなくなって、つなみがやっと周りに遠慮せずに甘えられるようになって二年だった。もっともっと甘えて欲しかった。1匹目の猫を亡くしたときくらい泣いた。  これを書いて、少しだけ、気持ちが落ち着いてきた。明日一日、ずっと一緒にいようと思う。
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