2人が本棚に入れています
本棚に追加
エピローグ
卒業式。
最後はやっぱりこの場所だろう、と屋上へ向かったら、鍵が閉まっていて心底ガッカリした。水島もここへ来ただろうか。最後なのにもう会えなくなるのかな、と顔が曇る。
教室など目ぼしいところを探したが、どこにも姿がなかった。水島の性格上、卒業式が終わったら速攻で帰っていそうだ……トボトボと下駄箱に向かい外に出た。本当に会えなかった、とガッカリしながら校門を通過する。
「瀬田君!」
水島の声が聞こえて慌てて振り返る。水島は校門を出てすぐの石段に座っていた。
「あっ! なんだよ、もう帰っちゃったかと思った! 俺屋上行ったら鍵閉まってて……」
「やっぱり行った? 私も。話したいことがあったから、校門なら確実に通るかと思って待ってたの」
「そうだったんだ。話って?」
「……私一生忘れないから。瀬田君との約束。守るから……必ず」
水島が俺を真っ直ぐ見つめて、優しく微笑んだ。
「……うん。約束だ。絶対だからな」
俺も水島を見つめて笑って答えた。
「……ふふっ。でもまさかプロポーズされるとは思わなかったなぁ。飛行機に気球にスカイダイビング……って新婚旅行かしら?」
さっきとは全然違ういたずらっ子の顔をして水島が言った。
「…………へ? い、いや、ちがっ! 決してそういう疚しい意味じゃなくて! 俺はなんていうか……本当に違くて!」
夏でもないのに全身熱い。恐らく顔は真っ赤だろう。最後の最後まで締まらない男だと自分でも思う。水島は愉快そうに笑ってるし……
けどちょっとだけ頑張ってみようか。
「……プロポーズは、もっとちゃんとするから……」
驚いて目をパチクリさせていた水島の顔が、今度は真っ赤に染まった。
最初のコメントを投稿しよう!