第二話 雨音は死者の声 二

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 雨は土砂降りであったが、家に到着する頃には小降りになった。運転手にチケットを渡して降りると、雨は霧雨に変わっていて、傘の必要がない程だった。  そして、家に入るとシャワーを浴びてリビングに戻った。 「真っ先に両親と会話かと思っていた」 「塩家、人の家で寛ぐな」  いつもならば、真っ先に両親に報告なのだが、今日は雨が降っている。水の気配が強いと、影響が大きいのだ。 「…………雨が強いと、水に影響が出やすくて……前に、瓶の水を、全部、蒸発しかけた」  俺は無意識に、自分へ掛かった水を蒸発させて飛ばせているらしい。それが無意識だったので、雨を払うように、付近の水も蒸発させてしまいそうになった。  今はコントロール出来るようになっているが、気分を切り替えてから部屋に入るようにしている。 「では、先に飯にするか」 「既に食べているだろう」  塩家はテーブルに弁当を並べ、ビールを持っていた。 「まあ、飯にするか……」  今日は、天野と会話していて、賄いを食べている時間が無かった。だから、昼から何も食べていない。コックは体力勝負な面もあるので、食べられる内に食べておきたい。 「相良さんに声を掛けられたから、夜の誘いかと思ったら…………」 「違ったの?」  確かに、夜の誘いにしては、色気が無いなと思っていた。 「まあ、俺というよりも、役柄の沢渡 愁に用事があったと言ってもいいな」 「ああ、そっちか…………」  塩家は役者で、演じた役の能力を使用できる。愁というのは、陰陽師の弟子というキャラクターで、天才もしくは天災という役どころであった。  だから、愁に相談というのは、まともな相談ではない。 「御崎さんの料理は手堅いな……参考になる」
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