第二話 雨音は死者の声 二

3/9
前へ
/203ページ
次へ
「俺は、竜ケ崎さんと意気投合して、今度、一緒にナンパしに行く事にしたよ」  御崎の料理は、派手さが無いが、洗練されていてブレがない。だから、安定している。料理というのは、芸術家ではなく、職人なのだと改めて感じてくる。 「それで、相良さんは設計に問題が無かったか、責められていて、助けて欲しいと言っていた」  相良は、森の宮公園野外ステージを設計していた。 「これは、建物に問題はないだろう。でも、通路には少々問題がある。それは、公園を管理している市の問題じゃないかな」 「俺もそう思うよ」  森の宮公園野外ステージでは、最近、事故が発生した。その事故の原因が分からない内は、次の使用が出来ないらしい。 「森の宮公園野外ステージ、森と噴水がある公園の中にあるステージだ。柵とかもなく、植木に囲まれた場所。だから、コンサートも無料のものばかりで、発表会にも使用される」  だが、ステージはしっかりとした作りで、音響もいい。  無料のものばかりと言いつつも、すべてが無料ではなく、有料のステージもある。その時は、周囲に簡易的な柵を置き、中に入るにはチケットが必要になる。 「行われていたのは、地域イベントの一つで、音楽フェス。森の宮音楽会」  ラジオなどが協賛し、多少有名なアーティストも来ていた。だから無料でも、混雑を避ける為にチケット制で、周囲には柵があった。 「チケットは、協賛している企業や商店に配られ、一般にはラジオ局での抽選で配られた」  音楽会は昼過ぎから始まり、事故が起きたのは後半に入る前であった。 「子供向けの曲があって、着ぐるみが踊った。それが終わった時、小雨が降り出した。子供を連れてきた親は、そこで帰ろうとした」  音楽会は五時間近く行われるもので、昼に来た家族は、子供向けの曲が終わったら帰る予定だったのだろう。イベントのチケットも、後半十六時過ぎから入場可能というものがあり、最初から入れ替わりが予定されていた。 「雨のせいで、一気に帰ったのか…………」
/203ページ

最初のコメントを投稿しよう!

99人が本棚に入れています
本棚に追加