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音楽祭では食べ物や、グッズも売られていて、子供向けの玩具も記念品として配られていた。だから、当初はパラパラと人が抜けてゆき、次の入場者がやって来る予定だったのだろう。
しかし、実際には雨のせいで、一気に家族が帰ろうとした。
「入口ゲートは三つ用意されていた。しかし、途中退場出口は一つしかなかった」
音楽会の終盤は、柵が片付けられ、自由退場になる予定であったので、途中退場のゲートは一つしかなかった。そこに、家族が殺到した。
「そして、退場の最中に次の曲が始まり、子供達が雷と間違えた」
光と音が重なり、子供達が悲鳴を上げる。そして、一人が走り出すと、つられて幾人もが走り出した。
「駅までダッシュする家族が相次ぎ、駅に抜ける道が渋滞になった」
そこに運悪く、駅前に続いている地下通路があった。地下通路は身動きも取れない程に混み合い、走り込んできた人がぶつかり、階段で将棋倒しとなった。
逃げ場が無かったので、中に押し込まれ、動けない状態になった。消防とレスキューが呼ばれ、入場を止めて救助された時には、五人が意識不明になっていた。
「大人は圧迫が原因で、子供は踏まれて、意識不明になっていた。怪我人が三十三人」
「建物というよりも、運営にも問題があったような感じもする。でも、大きな要因は雨だよな」
偶然が重なって、大事故になる。
「雨が引き金をひいたという事。誰もが、それは納得した。しかし……」
運営は、多くの想定をしなくてはいけない。それと、場合によっては、臨機応変な対応が必要だったのだろう。
でもそれだけでは、相良も塩家に相談しなかっただろう。
「それで、塩家さんの相談は何だった?」
「これと同じような事故が、他でも発生している。それは、偶然なのか聞いてきた」
相良の設計した建物で、他にも似た事例があったらしい。そこで、相良の設計が疑われていた。
「それは、相良さんの他の設計でも発生していた?」
「そうだ。でも、何かが変だった……」
それは、場所や状況が違っていても、いつも雨の日だったらしい。
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