99人が本棚に入れています
本棚に追加
翌日の早朝、俺は静かに起きると、身支度を整えた。そして、予約しておいたタクシーに乗ると、洋平と陽子の家に向かった。
陽子はタクシーチケットを二枚入れていた。最初は俺と塩家の分かと思ったが、そうではなく、朝の出勤の為だったのだろう。だから、俺は夜の内に、タクシーの予約を入れていた。
家に到着すると、陽子は玄関の前で待っていた。
「行ってらっしゃい」
「行ってきます」
俺は陽子からワゴン車の鍵を取ると、駐車場に向かった。
しかし、電話をしていなかったのに、よく俺が来る時間が分かったものだ。陽子は接客の時もそうで、話す言葉よりも多くを理解して行動に移す。
そして、俺は市場に行くと、野菜などを買い込んだ。
「おはよう、今日は佳樹が一人で仕入か!成長したな!」
「おはようございます!」
俺は洋平にくっついて、よく市場にも来ていた。だから、顔見知りが声を掛けてくれる。しかし、その多くは、俺が小学生だった頃から変化していないと思っている。
「佳樹、魚も買ってゆくか?選んでやるぞ」
「お願いします」
そして、魚のポイントを教えて貰った。
「しかし、佳樹は可愛いな。俺の女房が、化粧してくれば良かったとか言っていたよ。変らないのにな!ははは!」
「あの…………奥様が睨んでいますよ」
その言葉は、聞こえているので振り返りたくない。
俺は皆には見えていないが、竜を飛ばしていて、鮮度や成分を確認している。だが、目利きの人は本当に凄い。この食べ頃という勘を、俺も培ってゆきたい。
食材を購入し、陽洋に戻ると下準備を始める。洋平は、買ってきた食材でメニューを決めていたが、俺は決定権がないので、写真を送信しておいた。
すると陽子がやってきて、店のブラインドなどを開け始めた。
最初のコメントを投稿しよう!