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「佳樹ちゃん、おはよう。仕入に行ってくれてありがとう。洋平君もだいぶ良くなったから、明日からは動けるかな……」
「無理しないでください。俺ならば、大丈夫です」
それに、仕入れも料理の内なのだと、よく洋平が言っていた。だから、とても勉強になる。
「あら、今日は魚も仕入れたのか…………洋平君が喜びそうおな食材ね」
「肉もあります」
俺は肉よりも、魚料理の方が好きだ。素材の味にバリエーションがあって、どう活かすかが面白い。
「でも、野菜も豊富に仕入れしてきました。珍しい野菜などもあります」
「そうね。私も食べてみよう」
新鮮な野菜は生きている。だから、とても美味しい。そして野菜は、食べられる事を喜ぶ。それは、多分、生き物に食べられ糞となり排出された後、再び植物の栄養になるというサイクルが喜ばしい事なのだ。
生き物というのは、本能で循環を知っている。
「この野菜は、きれいな色だ……」
それと、食事は目でも楽しみたい。
「随分と、楽しそうだな」
俺がモーニング用のサラダを作っていると、塩家がやってきて、やや怒っていた。
「塩家、おはよう」
「俺を置いて出勤したな」
それは、仕入があるので当たり前だろう。
「水瀬の両親と祖父母がな、落ちる勢いで動き回って、俺を起こしてくれたよ…………」
「そんな事も出来るのか……」
塩家によると、俺が塩家を忘れて行ったと思ったらしい。そこで、塩家も仕入れに行ったと気付いていて、寝惚けながらも説明しておいたという。
「どうも、彼等は水瀬が小学生のままで、働いているというのを理解していないようだった。でもさ、暫くすると、記憶を取り戻してくる」
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