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第三章 雨音は死者の声 三
和希が持ってきた案件は、相良も関わっているらしい。
「兄貴と相良さんは知り合いだった?」
「いや、相良様がこっちを頼ってやって来たというのか……」
相良が設計した、地下のライブハウスで事故が発生し、空き家になってしまったらしい。そこで、和希の不動産屋に持ち込まれ、事故の原因を調べていたら、どうも変なのだそうだ。
「建物に問題が無い?」
「その通りで、他にも似た店はあるが、事故は発生していない。でも、何かが変だ。全く似ていない店で、同じような事故が発生していた」
建物に問題があったのではなく、対応に問題があったのだろうか。そこは、調べてみないと分からない。
「相良様の設計は人気の物件で、空き室など出した事がない。だから、借り手はすぐに見つけられるはずだ。でも、相良様は、俺と取引していきたいと言った」
それは、和希も理解していて、関本三号ビルの件と、俺がいるからだと分かっていた。
「確かに、佳樹は俺の竜だ。だから、俺以外が依頼する事は出来ない」
「そうなの?」
すると、和希は本気で頷いていた。
「ここの客は?」
「俺が許可した範囲での依頼しか、出来ないようになっている」
和希が許可していれば、オーダーを受けてもいいらしい。
「竜の暴走は、そうやって防いできた」
「俺、暴走しがち?」
すると、幾度も和希が頷いていた。
「佳樹は、見た目はクールなのに、お調子者で、のせられると、やってしまう」
「まあ、否定できない」
俺への依頼が、和希を通さないと出来なかったとは、全く気付いていなかった。
「それで、佳樹。事故が起きた現場を見てきてくれ。資料は送っておく」
「わかりました」
俺が返事をすると、和希が又、抱きついて頬擦りしていた。この過剰なスキンシップは、今に始まった事ではなく、俺が生まれた時からだったらしい。しかし、赤ん坊と兄ならば笑っていられるが、成人男子同士になると変だろう。
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