第三章 雨音は死者の声 三

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「兄貴、離れて…………」 「毎日、会いに来たいのだが、嫌がるから止めている。だから、これ位はいいだろう」  毎日来られても困るが、今日は疲れているので止めて欲しい。しかし、塩家は平然として食事をしていて、気にしていなかった。 「それで和希さん、竜には持ち主がいるものなのですか?」 「必ずいるとは限らないよ。佳樹は少し特別で、新しく生まれた竜だったからね」  竜も生まれて死ぬ運命を持っている。しかし、人間よりも長寿で、個体数も少ないので、身近で死というものを体験する事はない。 「兄貴、竜に詳しかったのか?」 「いいや、佳樹を育てる為に調べ続けているだけだ」  それでは、俺は成人したので、もう調べなくてもいいだろう。 「生まれたばかりの生き物は可愛いだろう?竜も例外ではなくて、他の竜が寄ってくる。そして、可愛がろうとする。それが結果として、暴走になった。だから、俺が制御する事にした」  和希は、自分で言ってから長い溜息をついた。 「いろいろあったのですか?」 「いろいろあった」 「え?」  和希もしみじみと頷かないで欲しい。俺がとてつもなく迷惑をかけたようで、恐縮してしまう。 「佳樹が一歳になるとき、風邪をひいてくしゃみをした。佳樹は、どうしてなのか、自分のくしゃみが面白いようで、くしゃみの度にケラケラ笑った。すると、歴代最大級の台風が発生した」  俺が一歳の誕生日に、風邪をひくと、どういうわけか歴代最大級の台風が発生したらしい。関連は分からないが、和希は竜の仕業だと考えたという。 「佳樹が保育園の遠足で、晴れたらいいねとテルテル坊主を軒先に吊るした。すると、それから日照りのようになり、水不足になった」 「威力が大きいのですね」  でも、遠足に行けて満足した。
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