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封書を手にして見れば、なるほどズシリ──とした重さが伝わって来る。手掌の上で軽く放り投げてみれば、ジャラリジャラリと金属の触れ合い発てる音がした。宛名を見てみれば几帳面な悠聖の文字で、此処の住所と私の名前が書けれており、ひっくり返してみれば、桐ケ谷 悠聖と署名があった。
送り主は間違い無く悠聖のようだが──同封されている物は明らかに怪しい。
仮にこれが、晴幸の言うように爆発物郵便物だと仮定してみよう。
悠聖が……? 何の為に?
私の鼻からフン──ッと、思わず笑いが漏れてしまった。
同じ生業で好敵手としている私を時に疎ましく思いもするのだろうが、悠聖はこんな回り諄い男であるはずも無く、愈々私を潰そうならば日本刀でも持って押しかけて来ると……そう言う気性の男である。
私は封筒の縁を掴むと、壁の処まで後退った晴幸に目を向け、思い切り良く横へ引きそれを開封した。
「きゃっ──」
と、声を上げ耳を塞いだ晴幸は、壁へ張り付き固まってしまっていた。
封書は──口を開かれはしても静寂にあった。胸の中で、幾つ数を数えたのであろうか晴幸は、漸く身体を伸ばし私の元へ寄って来ると、安堵したかの笑いを頬へ浮かべた。
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