嫌らしくも黄金色の手枷

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嫌らしくも黄金色の手枷

 封書の中身を机上へ落とすと、ゴトリ──。と、黄金色に輝く手枷(てかせ)が姿を現した。同封物を探ってみれば、封筒の中に白い便箋が一枚へばり付いていた。三ツに畳まれた便箋を開くと、見慣れた悠聖の文字が並んでいた。 『拝啓』と始まるその手紙には、こう書かれて有った。 『元気にやっているか。先日俺は金沢まで心と身体を癒しに行って参ったぞ。流石、加賀百万石の地は素晴らしいもので有った。雷斗(らいと)、お前と二人、水入らずで訪ねて見たいものだと思ったぞ。さて、東尋坊へ足を延ばして散策した帰りに、気まぐれに立ち寄った古物屋で、何とも面白い物を見付けてな、同封する手枷であるが。どうだ、美しい品であろう。お前の蒼白(しろ)く華奢な手首に良く似合ういそうだろう? 古物屋の主人の話に依れば、西洋から船に乗って流れ着いた物だそうで、曰くが有ってな。これで手首を拘束すれば、身体の芯が熱く火照り、昇天するまで外れないのだそうだ。鍵は有るがな。俺が持っておこう。どうだ雷斗、そいつを持って俺の元へ遊びに来る気はないか? 手厚く持て成すぞ。その気になれば来るが良い。ではな──』  読み終えた私は、心の中で思い付く限りと悪態をつき、机上の手枷へ目を走らせた……のだが、つい先ほどまで、厭らしく金の光を放ち、そこに有った手枷が消え失せていた。
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