二人の嫉妬

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このような接吻をすると、途端に一郎さんを ″男性″ だと思えてくる。 勿論、性別的に男性なのだが、男色を疑ってしまうほど中性的な美しさを持っていらっしゃるから、どうしても女性に欲情する所がイメージできなかった。 ますます息の早くなった一郎さんの唇が、開かれた掛襟の間から、私の膨らみに触れた。 始めは恐る恐る。 けれど、次第に赤子が乳を欲しがるように激しく貪り始めた。 今まで前夫にも感じなかった甘美に、思わず声を漏らしそうになる。 いけない。 隣には眠っている義弟がいる。 声を我慢して、快楽に身体を委ねる。 ……あ。 照明。 消して欲しい。 今さらながら赤々とした部屋でこのような淫らな姿を見られることに恥じらいを覚えたその時、奥の方から視線を感じた。 ――え……。 何気に四畳部屋の方に顔を向けたら、襖が僅かだが開いていた。 その隙間から、二つの目玉がこちらを覗いていたのだった。
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