私の不幸せな結婚

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「初めまして……中野一郎です」 声は全く抑揚のないもので、ニコリともしない表情からも、この見合いに乗り気じゃないのがハッキリとわかった。 「初めまして。琴子と申します……」 ――また、こうなるのか。 前夫の冷たい、暴力的な横顔を思い出す。 やはり私との結婚を望んだのは爵位を欲しがっている彼の親だけで、この方は私には微塵の興味もないのだ。 そう思うと、つい俯き加減になる。 「中野社長、桜小路伯爵、どうぞこちらへ」 そこへ仲人の梅吉が珍しく洋装で現れ、少し早めの昼食をとるために両家を部屋へ促した。 「琴子、息してるか?」 入室の際、梅吉がそっと囁いた言葉に少しだけ緊張がほぐれ、皆で談話しながらの食事会は何とか終えられた。 「少し、二人でお話してきたら? 庭園にでも行って」  決まり文句を言う母の口元は笑っているが恐かった。 ″祖祖をするなよ″ ″余計な話をするなよ″ と、父の目も訴えている。 「じゃあ、寒いので少しだけ」 先に席を立ったのは一郎さんだった。
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