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私の心臓がまた跳ねた。
殺されかけた、なんて大袈裟だ。
でも、前夫の暴力は世間では有名だったのかもしれないし、華族の令嬢であっても、妾腹だからこそ易々と手を挙げられたのでは、と今となっては思う。
唇を噛みしめる私の横で、一郎さんは淡々とした口調で続けた。
「そんな目に遭った女性なら、男性に触れられるのも怖いんじゃないかと思ってね」
「……どういう意味でしょうか?」
一郎さんの切れ長の大きな目が、私の全身を捉える。
「もしそうなら、僕にとっては好都合だってことだよ」
私は、首を軽くひねった。
しばし考える。
あ。
それって。
……まさか。
男色家ってこと?!
口をパクパクしていると、一郎さんは片頬をあげて薄く笑った。
「そういうこと」
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