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本気でお尋ねしたのに、一郎さんはまるで馬鹿を見るような目をしていた。
「琴子さんは、一応この家の女主人なんだから、屋敷内を仕切っていればいいんじゃないかな」
「仕切るって……」
「貴女のお母さんのようにしていればいいってこと」
そう言われて私は、母は一体何をして一日過ごしていただろうか、と思ったが、物心つく前から里子に出され、戻ったら結婚をし、離婚してからは幽閉に近い生活を送っていたので、実はあまりその実態を知らない。
「僕が想像する伯爵夫人は、短歌を詠んだり、英語を学んで社交界で活かしたり、鹿鳴館で踊ったり、なんとか同好会みたいなの作ってサロン開いてるんだけど、違う?」
私は、ドレス姿でくるくると踊る母を想像した。
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