私の旦那様

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「……一郎さんは、そのような妻をご所望ですか?」  伯爵の家なら、お金さえあればそういう優雅な生活も送るのだろうけれど、私は、あくまでも一般の家に嫁いだのだから、他にやることがあるはずだ。 「僕に妻の理想像なんてないから。前の結婚と同じようにしていたら? 貴女に任せるよ」 「……え、あ、はい」    疲れた顔をして、一郎さんは背を向けて布団に入ってしまった。 「……おやすみ」 「はい、おやすみなさい……」  電気を消して、しずしずと私も布団に入る。  柱時計の秒針の音を聞きながら、目を瞑って一郎さんの言葉を頭の中で反芻した。  ——“貴女” か。  たとえ、形だけであっても、せめて名前で呼んでくれないかしら。  ……そういえば、あの見合いの日から、彼の笑顔を見ていない。
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