運命の日 3

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 そして、ふと、気がついた。  一郎さんの左手の甲にある火傷が、古いものであることに――  ……震災で負った火傷ではない……? 「この火傷は……」  ――まさか。  気が付いたと同時に、「あっ……」と、声を上げた。  立ち上がってよろめいた私の背中を、誰かが支えた。  この手は、義父や添田さんのものではない。 「……琴子……」  優しい包み込むような声に、そっと振り向いた。  悲しみではなく、今度は安堵の涙が洪水のように溢れてくる。  彫刻のような陰影と、切れ長の大きな瞳。きめ細やかな肌に、頬の傷あと。  薄い唇が、「琴子」と、もう一度名前を呼ぶ。  そこには、一番、大切な、私の夫がいた。 「一郎さ……ん…」
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