運命の日 3

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「僕も軽い火傷を負って別テントで治療を受けている間に……皆が、宗一を僕だと思い込んでしまったようだ」  私の肩を抱いたまま、一郎さんが経緯を話してくれた。  大地震の起きる数日前。  いつものように紡績工場で仕事をしていた宗一さんが、集団で飛び立つカラスや、寮からネズミが出ていく姿を見て胸騒ぎを覚えたのだそうだ。  昔から、動物の異様な行動の後には震災が起こる、という言い伝えを信じる者も多い。  以前、飼っていた猫がおかしな唸り声を出した翌日に大きな地震があった経験から、宗一さんは帝都が危ないと感じた。 「それで、寮を抜け出して、俺に会いに来たと同時に、火災に巻き込まれたんだ」
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