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「……聞いていらしたんですか?」
「あぁ、全部ではないけれど」
カァァ、と赤くなる私を見て、一郎さんがにっと子供みたいにイタズラに笑った。
「琴子からの手紙は火事で燃えてしまったから、あの時の言葉は忘れないように呪文のように脳内で繰り返し呟いてるよ」
「……おやめください」
゛一郎さん……ご心配なさらずとも、私は、ずっと貴方だけのものです ゛
゛私も、一郎さんと結婚して、初めて誰かを愛しく想う気持ちを知りました…… ゛
「あんなこと、直接君に囁かれたら、僕はきっと何が何でも死の淵から蘇っていただろう」
「……あの時、宗一さんが聴こえていらしたのなら、内心困り果てていたでしょうね」
「そうかもしれないね。 絶対に゛俺じゃないし゛と思ってたよ」
笑い合う私達の背後で、「ゴホン」とわざとらしい咳払いが聞こえ、二人同時に振り返る。
「添田さん」
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