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隣にいた私は、そのお顔の凛とした美しさにウットリと見とれてしまった。
「そのためには乗り越えなくてはならない問題が山程あるが、君は付いてきてくれるだろうか?」
私は間一髪も入れずに、「ええ」と頷いた。
その時、穏やかな風が吹いた。
焼け野原となったはずの田園地に、やや季節外れのヒマワリの花が沢山咲いていて、にわかに揺れた。
「まるで、夏のようだ」
炎に焼かれても、土から芽を出す力強さに感動すら覚えた。
それは、一郎さんも同じだったようで、目を細め、眩しそうに見つめている。
「琴子みたいに生命力ありそうだね」
「それ、褒められているのでしょうか?」
「もちろん。あ、女性ならばもっと可憐な花にたとえるべきかな?」
「……いいえ」
可憐ならば、一郎さんこそが一番相応しい。
傷を負っても夢を追い続ける男性は、ほんとうに美しいものだ。
――この方の妻になれてよかった。
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