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相手は一回り以上歳上の厳つい男だった。
見合いの時に何て無愛想な人だろうと思ったが、相手の両親が、「一見、ぶっきらぼうだけど情熱的な所もあるのよ」と、擁護していたし、結婚してみれば愛情も湧くかもしれないと、淡い希望を胸に嫁いだのだ。
でも、その期待は見事に裏切られた。
見た目だけ大人の夫は、家業に従事することは少なく遊んでばかり。おまけに乱暴者で使用人に手をあげる所を何度も見た。
気に入らない事があると、女であっても殴るのだ。
「なんだ、その目は?」
女中に手をあげる夫に非難の目を向けると、鼻血が出るほど殴られた。体だけではない。言葉でもたいそう私を傷つけた。
「売られた没落華族の妾腹が偉そうにするな!」
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