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8月、時刻は昼過ぎ、天気は快晴。
都内某所、23区内という大変素晴らしい土地に佇む12階建てマンションの10階。
2LDKという一人暮らしには少々広すぎるような間取り、玄関に謎のアロマなんて置いちゃって「女子ウケ狙ってますね〜」なんて言ってやりたいけど、そんなことしたら命が危うい。
白いフワッフワな玄関マットの上で私、藤野未祐は先程から正座をさせられているのだけど……
まずは、持参しましたデパ地下でお買い上げ、SNS映え間違いなしのお洒落スイーツ(マカロン全6種)を差し出す。
「あの、よろしかったらこちらを……」
「……なにこれ」
「マカロンです」
「女子の食い物じゃねえか。まあ食うけど」
「(食うんかい)」
こちらの部屋の家主様に、恐る恐るお洒落スイーツ(マカロン全6種)を手渡すと、ちょっと嬉しそうな顔をした。
よかった、掴みはおっけーだ。
少し気を許したところで、早速本題に入る事に。
「まずはお礼を申し上げます。格安でこんな良い所に住まわせていただき、大変恐縮です」
「ああ、それで?」
「念のため確認なのですが、家賃の不足分につきましてはこちらも身体でお支払いしろということになりますでしょうか?」
「バカ野郎、出口は後ろだぞ」
「絶対に出ていくものか……っ!愚問でした!申し訳ございません!」
眉間にシワを寄せた家主様のお怒りに触れてしまい、私は慌てて頭を下げる。
もしこのまま出て行くことになったら、私は路頭に迷ってしまうことになるのだ。
いい歳してホームレスだけは勘弁してくれ。
「肩揉みましょうか?」とご機嫌取りに舵を切った私に、腕を組んでこちらを見下ろしていた家主様がハアッと大きなため息をつくと
「とりあえずあがって。リビング涼しいから」
「あ、お邪魔しまっ……いてて!足、足痺れて……っ!」
「なにしてんだよこのタコ!」
「(……タコ?)」
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