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「どういう意味でしょうか」 「どうもこうもない。母は常々こう溢していた。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と」  血の繋がった家族への恋愛感情など、許されるものではない。焦がれた女性が、自分の母なのかもしれないという疑惑を突きつけられたときのあの絶望。それは、好きな女性が父の不倫相手なのだと知ったときよりもさらに彼を苦しめた。  言外に、父親の愛人だったのだろうと匂わせれば、ゆっくりとミスジョンソンはまばたきをする。紡がれた彼女の声音は、聞き分けのない子どもに言い聞かせるかのごとく、あくまで穏やかなものだった。 「お言葉ですが。旦那さまと私の間に、恥ずべきことなど何ひとつありませんでしたよ」 「どの口がそれを言う」 「宣誓魔法をかけましょう。神に誓って、私はあなたのお父上とそのような関係にはありませんでした」  宣誓魔法は、国の裁判でも使われる神聖なものだ。この国に生きる以上、神の前で嘘をつくことなどできはしない。  きらきらとまばゆい光が、ミスジョンソンに降り注いだ。そのまま彼女は淡く微笑む。その透き通った笑みは、エドワードの胸は鈍く(うず)かせた。  天使が落ちてきたのだ。不意にエドワードは得心した。そうでなければ、10も年上の女性相手にこうまで心をかき乱されるはずがないではないか。 「ならば、これはどういうことなのだ!」  エドワードは痛みとわずかな恐れを振り払うかのごとく、無意識に声を張り上げた。彼女の目の前に突きつけられたのは、先ほどのペンダント。それが今は形を変えている。少し厚みのある作りに見えたそれは、ロケットペンダントであったらしい。そしてロケットの中には、薔薇の花束を持ち佇む女性の姿があった。 「あなたの名前は、ロージー。この女性は、若かりし頃のあなたなのだろう?」
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