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美津は、鶴田屋の一人娘だ。 父は鶴田屋利兵衛。 母のよしは武家の出だったが、驕ることのない気さくな人柄。人々の信用を集め、すぐに鶴田屋の「若女将」の地位に落ち着いた。 お武家の娘なんて…嫁ぐ前にはそう言われていたが、すぐにそのようなことを言う者はいなくなったそうだ。 「美津、よくお聞きなさい。みな、お前に頭を下げるけれど、それはお前が偉いのではなくて、お前のお父様が偉いのよ。」 幼い頃に母に度々言い聞かされたことを美津は覚えている。
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