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ビザザ山の元凶
ドッッッッッゴオオオオオオーーーン!!
グザという名の村を見下ろすビザザ山から、轟音と衝撃が放たれる。
ビザザ山は森林と雪に覆われた標高1000メートルほどの山だが、火山では無い。
しかし、時々こうして火山が噴火したのでは?と思わせるほどの衝撃を放つ。
ビザザから響く轟音と衝撃、その根幹を断つべく王都リビビから選抜隊が到着した。
「ようこそグザへ、この様な何もない村に王都からわざわざ・・・」
「回りくどい挨拶はよい!さっさと宿に案内しろ」
選抜隊の隊長ツコンポは出迎えた村長の挨拶を遮り、要件だけを差し込む。
「は、はあ、こちらでございます」
「うむ、本日は我々が宿を貸切る。誰も入れるではない」
「はい、そ、そのう、それで、お代は先払いとなっておるのですが」
「はあ?き、貴様!我々がどういう目的でここに来たか知っておろう?」
「はい・・・しかし、宿の者にも生活がありますし、我々も騎士さんの為に食料やらなんやら用意させておりまして金が掛かっております・・・」
「無礼者!!自分の事しか考えられん心の貧しい者どもめ!」
「で、ですが・・・」
「やかましいわ!事を終えたらまた話を聞いてやる」
「・・・・・・それでは遅いのですよ」
「なんか言ったか?」
「いえ・・・何も」
村長の最後のセリフが少し気になったツコンポだが、旅の疲れを早く癒したい気持ちが勝り、宿へと向かった。
王都選抜隊は宿で一泊し、早朝、ビザザ山に向け出発した。
数刻後、ビザザ山八合目、選抜隊の目的対象がそこにいた。
対象の姿は老人の男性でかなりの高齢に見える。みすぼらしい布切れ一枚を着て雪の上に裸足で立っている、髪は剝げている部分もあれば伸ばしっぱなしの部分も有りボサボサ、目は虚ろでよだれを垂らしている。
「老人、名は?」
「・・・・・・・」
隊長の問いかけにその老人は返事をしない。
「老人、名は?」
「・・・・・・・」
やはり返事をしない。
「老人、名は!!」
「・・・・・・・」
「えーーーい面倒だ!もうよいわ!こやつが我々の対象の魔導士ジイサンと断定する!総員、構えーーーーーーー!!!」
隊長の号令に従い兵士たちが編隊を組む。
「賢者セマカ、聖騎士コーザ、剣士イワヨ!お前らは我に続け!!」
「ツコンポ隊長、ほ、本当にこいつがあの大魔導士ジイサンでしょうか?今にも死にそうですよ?」
「賢者セマカよ、見てみろ!冬山でこんな軽装だぞ、並の者なら凍死している。平然としているではないか!」
「た、確かに・・・」
「納得したか?」
「は、はい、しかし万が一という事もございます。ここは私が確認します」
「分かった」
賢者セマカはテニスボールサイズの火の玉を掌に生み出した。
「これなら当たっても死ぬ事はありますまい、ファイアーボール」
セマカはジイサンと呼ばれる老人に対して火の玉を飛ばした。
時速100キロの高速スピードで火の玉は走り、ジイサンの腕に命中したかと思った瞬間、ジイサンはキャッチボールでもするかの様に、火の玉を片手でキャッチすると掌の上で弄び始めた。
「わ、私のファイアーボールをお手玉みたいに・・・」
「やはり奴はジイサンで間違いない!見た目に騙されるな!!総員で討ち取るぞ!!
油断するな!!今までの選抜隊が全て返り討ちにあっている事を忘れるな!!」
おおおおおおおーーーーっ!50名の雄叫びがビザザ山の空に鳴る。
だだだだだだだだだだっっっ!と総勢50名の選抜隊は波状攻撃をジイサンに仕掛ける。
編隊の先頭をゆく剣士イワヨの剣先が、ジイサンの喉元に向かっていく。
「なんじゃあ?魔王軍の残党かあ?人間みたいじゃのう、上手く化けたもんじゃ」
ようやくジイサンが口を開いた。そして・・・
「敵にはこのジイサン、容赦はせん!くらえ、超爆発衝撃呪文っっっ!!」
ドッッッッッゴオオオオオオーーーン!!
ビザザ山から轟音が響いた。
「まったく・・・だから死ぬ前に金払っとけって言ったのに」
グザ村の村長宅、村長はコーヒーを飲みながら呟いた。
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