コタツでアイスクリーム食べる感覚で

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    「玲子(れいこ)絹恵(きぬえ)も、今週末は予定ないよね? みんなでハイキングに行こう!」  と忠代(ただよ)が言い出したのは、昼休みの出来事だった。  教室の机を合わせて弁当を食べている最中(さいちゅう)であり、「みんな」がこの場の三人を示しているのは明らかだ。忠代が突拍子もない提案をして玲子と絹恵を引っ張っていくのも、よくある話だった。  それでも玲子は、眉間にしわを寄せて聞き返す。 「ハイキング? こんな時期に?」  既に冬真っ盛りの12月だ。少し前ならば紅葉シーズンかもしれないが、もはや外で遊ぶには寒すぎる季節だった。  しかし忠代は、ケロッとした顔で頷く。 「うん、ハイキング。バスで1時間半くらいのところにね、面白い心霊スポットがあるんだって!」 「ただちゃん、それ、ハイキングじゃなくて肝試し……」 「それこそ『こんな時期に』じゃないの。そういうのは夏のイベントでしょう?」  絹恵がボソッと呟くのに続いて、玲子もハッキリと告げるが、忠代は意に介さなかった。 「玲子がいるから大丈夫! コタツでアイスクリーム食べる、みたいな感覚で行きましょう!」 「どういう意味よ、それ……」 「あっ!」  玲子の言葉を聞き流し、忠代は叫びながら立ち上がる。 「アイスクリームの話をしたら、食べたくなっちゃった! 私、ちょっと買ってくる!」 「お昼休み、あと10分しかないよ……」  絹恵の忠告を無視して、教室を飛び出していく忠代。  玲子はマイペースな彼女に少し呆れながら、何やら言いたそうな絹恵に目を向けた。 「何かな?」 「えーっと……。コタツの暖かさでアイスクリームの冷たさに逆らいながら食べるのと同じでね、れいちゃんの能力があれば心霊スポットも怖くない。そう言いたかったんだよ、ただちゃんは」  先ほどの「どういう意味よ」に対して、忠代に代わって答えてくれたようだ。  玲子にしてみれば、あれは質問ではなくツッコミのようなもの。あんな言い方はしたけれど、何となく意味は理解できていた。  それを今さら律儀に説明しようとするのは、いかにも絹恵らしい態度だ。苦笑いする玲子の前で、絹恵はさらに言葉を続けていた。 「ほら、れいちゃんは除霊ハンターだからさ。ただちゃん、れいちゃんを頼りにしてるんだよ」 「そんな大層なもんじゃないよ、私は。それに……」  軽く手を振りながら、玲子は否定する。 「……前にも言ったけど、その『除霊ハンター』って言い方。『馬から落ちて落馬する』みたいに、変だからね?」    
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