コタツでアイスクリーム食べる感覚で

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    「さあ、ここよ!」  週末。  山奥行きのバスに揺られること1時間半、さらに徒歩で十数分。  三人がやってきたのは、今では使われていないトンネルの入り口だった。  先頭の忠代は瞳を輝かせて、真っ暗なトンネルの中を指し示している。 「どう? いい雰囲気でしょ!」 「ただちゃん、なんだか背中がゾクゾクしてきたよ……」 「そう、それよ!」  忠代は絹恵の小声を拾って、嬉しそうに手を叩く。 「素人の私たちですら感じる霊気! これぞ本物の心霊スポットよね?」  専門家の意見を仰ぐ、という顔で玲子を見るが、当の玲子は苦笑いしながら首を横に振った。 「興奮してるところ悪いけど、これは霊気じゃなくて冷気だと思う」 「ただちゃん、私もそう思うよ。だって、あれ……」  玲子に続いて、絹恵も意見する。手袋に包まれた手を向けた先はトンネル入り口の上側で、そこには立派な氷柱(つらら)が垂れ下がっていた。 「とりあえず、せっかく来たのだから入ってみるよね? 中は中で、また違うかもしれないし」  忠代の提案に従って、三人はトンネルに侵入。  持参してきた懐中電灯で照らしながら、奥へ奥へと歩いていく。 「中も寒いね。ゾクゾクが消えないよ……」 「これはもう、冷気じゃなくて霊気かな?」  絹恵の言葉に反応して、後ろの玲子を仰ぎ見る忠代。  しかし無言で首を横に振られて、残念そうに肩を落とす。 「まあ、いいわ。まだ入ったばかりだもん。もっと進めば、きっと……」 「ねえ、ただちゃん。小石が落ちてるよ」  遥か前方を照らす忠代とは対照的に、絹恵は足元に(あか)りを向けていた。 「何言ってんの。廃トンネルなんて誰も掃除しないし、小石くらい落ちてて当然でしょ」 「そうじゃなくてさ。これ、天井から落ちてきた瓦礫の破片じゃないかな? だとしたら、このトンネル、崩落の危険があるんじゃ……」 「心配性だなあ、絹恵は。大丈夫だよ、かなり昔のトンネルだけど、今まで無事に()ってるんだから。今さら急に崩れたりしないわ」 「かなり昔って……。それ、そろそろヤバイってことじゃないの?」    
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