コタツでアイスクリーム食べる感覚で

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     前を歩く二人が言葉を交わす間、後ろの玲子は、だんだん表情が険しくなっていく。  正直なところ、寒さ自体は外よりもマシだと思った。忠代の「霊気かな?」を否定したのは、本心ではなく一種のポーズ。トンネル内部に足を踏み入れた途端、玲子は霊の存在を感じていたのだ。  ただし悪霊ではなく、学校にもいるような良い霊たちばかり。  暗いトンネルの中、懐中電灯の光を向けても、黒い影のような彼らはわかりにくいが、かろうじて玲子の目には見えていた。  怯えたように壁際に身を寄せている。おそらく、人間が入ってきたのを嫌がっているのだろう。  そう判断すると同時に、玲子は小さな違和感も覚えていた。  何かが少し違う。具体的には説明できないけれど、どうも怯え方が妙なのだ。  霊感のある自分にもわからない以上、見えない友人たちに話しても怖がらせるだけ。この件は自分の胸にしまっておこう、と玲子は決心するのだった。  そんな玲子の気持ちも知らず、廃トンネル探検の発案者である忠代は、楽しそうに話をしている。 「このトンネルが心霊スポットなのは、ちょっとした逸話があるからなの」 「ただちゃん、それ、怖い話じゃないよね?」 「トンネル工事中に、関係者がたくさん事故で死んで……」 「やっぱり怖い話じゃないの!」  心霊スポットの逸話ならば、人が死ぬ話くらいは当然であり、絹恵の反応は大袈裟だ。後ろで聞いていて、玲子はそう思う。 「でもトンネル事故といっても、生き埋めじゃなくてね。部分的に崩れて閉じ込められたけど、死因は窒息じゃなくて凍死だって。昔から寒かったのね、ここのトンネル」 「最終的な死因はどうあれ、トンネルが崩れて死んだなら、生き埋めってことになるんじゃない?」 「いやいや、この話のポイントは『凍死』ってところなのよ。なにしろ、その後そいつらの霊が出るのは、寒い冬ばかり。冬になる度にトンネル利用者が亡くなって、だからこのトンネルは閉鎖された、って話なんだから」 「ちょっと、ただちゃん! よりによって、そんな場所に冬に来たの!?」 「そうそう。この逸話があるからこそ、夏じゃ意味ないわけで……」    
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