コタツでアイスクリーム食べる感覚で

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    「きゃあ! 来ないでー!」  絹恵が悲鳴を上げる。  三人が走るのに合わせて『顔』も速度を上げて、一定の間隔をキープしたまま追ってきていた。  半ば自棄(やけ)で玲子は除霊グッズを投げつけるが、直接その身に当たっても『顔』は全く意に介さなかった。 「この野郎!」  果敢にも忠代は、落ちている小石を投げる。だが、玲子のアイテムが効かないのに、ただの小石が通用するはずもなかった。  やがて、三人は入り口まで到達。無事にトンネルから脱出したが……。 「ただちゃん、れいちゃん! どうしよう? まだ追ってくるよ、あれ!」  悪霊の歩みは止まらない。暗いトンネルから明るい外の世界へ、出てくるつもりらしい。 「……」 「この野郎! この野郎!」  除霊アイテムもなくなり茫然自失の玲子と、無駄と思いながらも投石を続ける忠代。  そして、今まさに『顔』がトンネルから出ようとした瞬間、 「ぎゃああああああ」  三人の耳に、悪霊の叫びが届いたのだった。 「え? どういうこと……?」 「よくわからないけど……。助かったみたいね、私たち」  突然の悪霊消滅に、困惑する絹恵と忠代。  玲子も似たようなものだが、彼女だけは少し違う。断末魔の叫びに重なって、悪霊の「寒い」という声が聞こえていた。  事情を察した玲子は、悪霊が消えた原因を指し示す。 「ほら、あれだよ。忠代のお手柄」  トンネル入り口の氷柱(つらら)に石が当たり、落ちてきていた。  地面にぶつかった衝撃でパリンと割れているが、その前に氷柱(つらら)は、悪霊を刺し貫いたのだった。 「除霊アイテムも物理攻撃も受け付けない悪霊だけど、冷たいものには弱かったのよ。元々が、凍死した霊の集合体だったから」 (「コタツでアイスクリーム食べる感覚で」完)    
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