ヤツはなんでもないものを盗んでいきました

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ヤツはなんでもないものを盗んでいきました

「泥棒に入られた……?」 私はベッドの上で愕然としていた。 狭いワンルームの部屋。 SNSのお手本のような可愛らしい部屋を作りたくて、DIYや100円ショップの道具を駆使して作り上げた私の理想のお城は、今や散々たる有様になっていた。 淡い水色に塗り替えたチェストからは洋服が散乱し、ドライフラワー、ガーランドなど手作りして飾り付けていたラックは倒されていた。 悩み抜いて購入したマリメッコの花がらのカーテンはカーテンレールから外れ床にべろんと落ちていた。 「どう言う事なの?」 私はよろよろと立ち上がると、頭がズキンと痛んだ。 「っ、痛い」 思わず頭を押さえた自分の腕を見ると痣があった。 「なにこれ」 私は自分に何があったか上手く思い出せずに、この部屋と自分に何が起きたが必死で思い出そうとするが、その度に頭がズキズキと痛み割れそうだった。 「まずは、落ち着こう。そう、深呼吸よ」 自分に言い聞かせるようにスーハーと深呼吸を繰り返して再びベッドに座りこんだ。 そして身体に痣以外に何か異常はないか。 下に落ちていたヒビが入った手鏡で顔なども確認して、念の為に下着もチェックする。 ひょっとして、この家に泥棒が入って来て私はその泥棒と鉢合わせして抵抗して、頭を打った。 もしくは襲われて気を失った。 だから記憶が混乱しているのかもと思えてきた。 幸いな事に見た目の傷はなく、顔にも傷はなかった。 ただ痣が腕と足に数か所。 そして首にも変な痣があった。 服も髪もぐちゃぐちゃだったが、下着に変な汚れ等は無かった。 少しだけ安堵出来た。 そして警察に電話しようと思った。 いつもならベッドの横に充電しているスマホは床に落ちていた。 ヒビが入っていたその画面に。 私の文字で。 『警察に電話しないで』 と、意味深なメモが貼ってあってドキリとした。
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