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泥棒から貰ったサイダーは大変美味しかった。
そして。
散らかった部屋に。
ぼろぼろの私。
自称泥棒男。
そんな奇妙な二人の会話が始まった。
本来ならこんな得体の知れない男と二人っきりになるなんて有りえない。
しかし私の事をどうやら知っていること。
私の記憶が抜け落ちる前の事を知っているのではと。
未だに記憶が戻らない私にはある意味助け舟かもと思い、話しだけでも取り敢えず聞くことにした。
私は未だざわつく気持ちを落ち着けようとサイダーをゆっくりと口に運んだ。
泥棒は新作のポテトチップスを摘んで呑気に寛いでいた。
「さてと、あなた──Mさんでいいか。僕の話しを聞く体制になったので話しをしますね。そんな難しい話じゃないんですよ。これ」
「そんな事を言われても、こんな異常な状況でハイそうですかと言えません」
「じゃ、イエスでいいですよ。ふふ」
──何とも、人を喰ったような態度だった。
私はこんな軽薄そうな男は嫌いだと思ったが、これでは話しが進まない気がしたので「イエス、イエス」と、頷き話しを促した。
「おっけー。じゃ、ズバリいいますが。Mさん。あなたは彼氏のYにDVを受けていました」
笑顔でそう告げられ、手に持ったサイダーを落としそうになった。
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