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「DVって……暴力ですか?」
私はどうにか落とさずにいたサイダーをそっと乱雑な床の上に置いた。
「はい。暴力です。しかも、まぁ面倒臭い共依存の関係になっていました」
そんな覚えは勿論なかった。
彼氏の『Y』の存在も思い出せなかった。
でも体の痣は。
──あ、ひょっとしてこの散らかり放題の部屋は泥棒に入られたんじゃなくて。
私が何か思い出そうとした瞬間。
ズキンと大きく頭が痛んだ。
私は思わず顔をしかめて下を向いてしまった。
「あ、頭が」
「無理に思い出さなくても大丈夫ですよ。今のままじゃ絶対に思い出せないんで」
絶対?
そう、口に出そうとするのも辛くて何も言えなかったが泥棒は心得ていると謂わんばかりに話しを続けた。
「痛みが治まるまで、僕の話しを聞いていて下さい。いいですね?」
私は痛む頭を押さえてこくりと頷いた。
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