そして、僕の恋心は奪われた

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「よっ……と」  ターゲットに向かって矢を放つ。 「はい。今日の仕事、これで終わり」  僕は近くの屋根に腰掛けて、先程のターゲットとなった彼女の様子を見る。  矢が到達した証拠に、彼女をピンクのオーラが包んでいた。  天使の仕事は人間の恋を成就させる事。  各地神社でお祈りされたら、神様が願いを掬い上げて僕達天使に指令が下る。  ……神社に天使?  天使はどこにでもいる。  神社に限らず神殿でも教会でも。  人が願えば掬い上げる神様がいて、その神様の使いとなるのが僕達天使、眷属。  日本は八百万だしね。  神様も和洋折衷だ。  何せ神様の使いだ。効力は絶大。  ただしそこに、人間に対する配慮は全くない。  願われたらそれを叶える。  その結果、二股になったり、不倫になったり。  そんな事はしょっちゅうだ。 「なんつーか、夢も希望もないよな」  人の気持ちなんて所詮、神様の手のひらの上で転がされてるんだ。 「何しけた顔してるのよ」  頭上から声がした。  見上げれば予想したヤツがいた。 「なんだよ、鈴音(すずね)」  同僚の鈴音が、腰まで伸びたウェーブの髪を抑えながら降りてきた。 「お疲れ〜」 「おう、お疲れ」
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