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「……お前、どこか悪いのか」
「肺がちょっと弱いんだって。でも、いつも入院してる訳じゃないよ」
明るい声で話す彼は、いかにも元気そうに見える。その活発さが、何だかとても切なく見えた。珍しく人に同情したおれは、鉛筆を手に取って提案する。
「もう一枚、何か描いてやろうか」
「いい。日曜日のお昼はよくここに来るからさ、その時また描いてよ」
「いや、おれはいつもここにいる訳じゃ」
「じゃあもう行くね! またね、おじさん!」
人が言い終わる前に、彼はそう言ってさっさと去ってしまった。
「まあ、暇だからいいけど」
そうぶっきらぼうに言ったものの、久方ぶりに人に褒められて、おれの胸は未だ歓喜の鼓動を響かせていた。
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