空描きのラベル

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「おじさん、まだ?」 「こら、動くな」  ある日、彼は似顔絵を描いてほしいとおれに頼み込んできた。目の前の人の顔なんて描くのは初めてだから、少し緊張する。それに今日の彼は、何だかいつもの明るさがないような気がした。いつもよりも時間をかけ、おれは彼の情報を線に変換した。  ようやく描き終え、おれは達成感の息を吐く。しかし、本当に愛くるしい顔立ちだ。このまま翼をちょいと足してやれば、それだけで天使の絵になってしまいそうだ。 「クソガキ、できたぞ」 「わあ……」  彼は完成した絵を持って、寂しそうに微笑んだ。やがてその顔は赤く染まり、堪えきれない嗚咽がその小さな口から漏れ出した。  まさか泣かれるとは思っていなかったので、おれは大いにたじろぐ。仕上がりに納得できなかった、いやクソガキと言ったのがまずかったのだろうか。 「お、おい、どうした。悪かったよ、クソガキなんて言って……」 「違う、違うよ」  首を何度も横に振り、彼はその絵をおれへと差し出す。 「おじさんに、僕の絵を持っていてほしいんだ」  その理由を尋ねると、彼は(はな)をすすりながら言った。
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